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「余震」という言葉が消えた!?その本当の理由とは?

地震が発生したあとに続く揺れ、いわゆる「余震」に不安を覚える人も多いでしょう。余震は数か月間続くのが一般的ですが、実は今、余震という言葉が報道機関などから消えつつあります。

気象庁の発表から「余震」という言葉が消えた理由         

大きな地震が発生すると、その震源近くにおいて地震活動が活発化することがあります。このとき、最初に発生した大きな地震のことを「本震」、あとに続く地震を「余震」と呼んでいました。

しかし、この定義では誤った判断をしかねないケースが発生しました。それが、熊本地震です。

まだ記憶に新しい熊本地震では、まず最大震度7の揺れが発生。当日から翌日にわたって、震度6前後の揺れも続きました。このとき、誰もが大きな「余震」だととらえていたはずです。

しかしその後、最初の揺れよりも大きな地震が発生。これにより、被害が大きく拡大しました。のちに気象庁は、最初の揺れは「前震」、その後の大きな揺れが「本震」と位置付けます。

また余震は“本震よりも軽い”というイメージが強いことから、この熊本地震をきっかけに地震時の呼びかけ方法を見直すことになりました。余震という言葉自体が“より強い揺れは生じない”と受け取られてしまいかねないからです。

地震調査委員会によって公開された、各自治体や報道機関などを対象とした地震後の対応を規定する「大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方」によると、従来と新基準で地震発生後の呼びかけ方が変更されています。

大きな変更点は、「最初の大きな地震より一回り小さい余震に注意」と呼びかけていたものが、「最初の大地震と同程度の地震に注意」となったことです。大きな地震が発生しても、より大きな地震がまた発生しかねないことを強調しているのがポイントです。

また、呼びかけにおける注意点として、以下のポイントが明確化されました。

・「マグニチュード」ではなく「震度」を用いること。

地震そのものの規模を示す「マグニチュード」よりも、地域別に揺れの強さを示す「震度」の方が、被災地の住民にとって防災行動につなげやすいと考えられるため。

・「地震」という言葉を用いること。

 「余震」という言葉は、最初の地震よりも規模の大きな地震は発生しないという印象を与えかねないため。

・震源の位置によって、最初に発生した大地震と同程度かそれよりも揺れが大きくなる場所もあることを状況に応じて発信すること。

参考:地震調査研究推進本部地震調査委員会「大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方」

https://www.jishin.go.jp/main/yosoku_info/gaiyo.pdf

これにより、地方自治体からの勧告や報道機関においては基本的には「余震」という言葉は使われなくなったのです。

大地震での地震活動3つのパターン

大地震の地震活動には、大きく3つのパターンがあります。それは「本震-余震型」「前震-本震-余震型」「群発的な地震活動型」です。

<本震-余震型>

突然発生した大地震で、さらに震源近くで規模の小さい地震が引き続いて発生する。

<前震-本震-余震型>

本震-余震型の地震活動の前に、本震よりも規模の小さな前震がみられる。

<群発的な地震活動型>

一連の活動の中で突出した大きな地震がない。「(前震-)本震-余震型」のようなパターン性もなく、不規則な地震活動が一定期間続く

大地震発生後の震源域やその周辺は、地下地盤の状態が不安定になります。いずれのパターンにおいても、しばらくは“地震活動が起こりやすくなっている”と考えましょう。

過去に起きた本震後の揺れはどうだった?        

それでは、これまで国内で起きた過去の大きな地震の地震活動を振り返ってみましょう。

阪神・淡路大震災

1995年に発生した阪神・淡路大震災では、最大震度7(マグニチュード7.3)を観測。本震以降も余震が活発に続き、最大余震は震度4(マグニチュード5.4)を記録しています。

余震域内では、1995年だけでも余震とみられる地震(震度1以上)が385回発生しました。その後は徐々に減少しましたが、気象庁の記録では2014年時点でも余震がたびたび起こっています。余震期間の長い「本震-余震型」だといえるでしょう。

2013年4月13日には、余震域の南西端に位置する淡路島付近で最大震度6弱(マグニチュード6.3)の地震が発生。この地震自体は阪神・淡路大震災の余震ではないとされていますが、震源域としては大きく影響を受けているともいわれています。

新潟県中越地震

2004年10月23日に発生した新潟県中越地震では、最初の地震で最大震度7(マグニチュード6.8)を観測。瞬間的な揺れの強さは「阪神・淡路大震災を上回る」ほどで、本震のあと同日内に震度5以上の余震が10回起こりました。その後も2004年11月28日まで、継続して大規模な地震が続いたのです。

新潟県中越地震は、最初の地震を本震とする「本震-余震型」であると考えられています。しかし、余震の規模が本震に迫るほどの大きさであったことから、“大規模地震が1日に何度も起きた”という稀有なケースの地震です。

東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、余震領域が長さ500キロメートル、幅200キロメートルの範囲にまで及びました。有感地震は、2011年3月に2,456回、2011年4月に1,140回。頻度こそ減りましたが、2012年時点でも余震が発生した記録が残っています。

気象庁の発表では「本震-余震型」とされていますが、本震以前にも小規模な地震が頻発していたことから「前震-本震-余震型」とする学説もあります。

熊本地震

2016年4月に発生した熊本地震では、14日と16日に震度7の地震が立て続けに発生。当時の見解では14日の地震が本震(本震-余震型)とされていましたが、より大規模な地震が16日に起こったことで、これを改めることになりました(前震-本震-余震型)。

4月14日の発生から4月末日までの半月で、震度1以上の地震回数は3,000回余り。前年の国内地震全体の回数より、熊本地震のみの余震の方が多い計算です。

大地震後の防災上のポイント

防災対策では、大地震の発生後に気をつけるべきポイントが2つあります。

まず1つ目は、1週間程度は同規模の地震に注意することです。とくに地震発生後2~3日は、さらなる地震の発生リスクが高いです。気象庁や市町村の呼びかけを確認し、より注意深く行動しましょう。

非常食や水などは最低3日分用意しておき、避難が必要な場合はいつでも持ち出しやすいところに置いておきましょう。非常食や水は、不安やストレスにより初日から消費してしまいがちですが、被災してしまった時こそ冷静に、計画的に消費していくことが大切です。 1日分に必要な備蓄食材を1つにまとめ、1日で使い切らないようにやりくりをすると、長い避難生活にも対応しやすくなるのでおすすめです。

2つ目は、周囲の環境や情報を確認すること。なぜなら、地震の強い揺れによって、落石やがけ崩れが起こっているケースがあるからです。家屋の倒壊や土砂災害の危険も考えられますので、状況に応じて避難も検討しましょう。家の周りに地震の影響で危険になる場所はないか事前におさえたうえで、そこからは離れた場所に素早く避難することが大切です。

避難情報が発令されると、テレビやインターネットだけでなく、防災行政無線などで広く伝達を行ってくれます。警戒レベルに応じた呼びかけがあるので、周囲と協力しながら避難行動をとるようにしてください。

警戒レベル3は高齢者などが避難、警戒レベル4になると全員避難が望ましいです。自己判断をせず、命を守る行動を心がけましょう。

まとめ

いざ地震が発生したとき、頼りになるのは知識と備えです。まずは慌てず、冷静な行動をとるようにしましょう。

地震後には、同規模の地震が再び起こる可能性があります。最初の大きな揺れが本震かと思っていても、それ以上の地震が発生する可能性は十二分にあることを頭に入れ、二重被害に遭わないためにも、家族や職場では避難方法や経路について話し合っておきましょう。

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