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防災もSDGsの時代

「防災」というと、ダムや堤防、防潮堤といった構造物により対策を講じるイメージが強いですが、近年は人工的な構造物による対策だけではなく、「グリーンインフラ」や「生態系を活用した防災・減災(Ecosystem-based Disaster RiskReducation【Eco-DRR】)」という自然の力を防災・減災に活用する新しい考え方が注目されています。

「グリーンインフラ」「Eco-DRR」とは

「グリーンインフラ(Green Infrastructure)」とは、自然環境のもつ多様な機能を人工的なインフラの代替手段や補完手段として活用し、自然環境、経済、社会にとって有益な対策を社会資本整備の一環として進めようという考え方です。巨大構造物に過度に依存しない国土整備の新しい手法で、多様な波及効果を生み出すことを特徴としています。

一方、「生態系を活用した防災・減災(Ecosystem-based Disaster Risk Reducation【Eco-DRR】)」とは、自然災害の被害に遭いやすい土地の利用や開発を避けることで、被災する可能性を低下させるとともに、生態系の持続的な管理、保全と再生を行うことで、災害に強い地域をつくるという考えです。 自然がもたらす防災・減災機能として、具体的には海岸林による津波被害の軽減、サンゴ礁による高潮被害の軽減、湿原による洪水調整、森林による土砂崩壊の抑制等の機能が挙げられます。

グリーンインフラ・Eco-DRRとSDGs(持続可能な開発目標)

持続可能な開発目標(SDGs)とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標です。 グリーンインフラ・Eco-DRRの導入は、地域ブランド・資産価値向上、農水産資源の回復、コミュニティの活性化、地方活性化の担い手の育成、生物多様性保全等多様な波及効果があり、SDGsの達成に寄与すると言われています。

グリーンインフラによるEco-DRRの導入例

グリーンインフラやEco-DRRは、いざという時には地域や住民を守る役割を果たす場が、普段は地域のレクリエーションの場となったり、観光資源となる美しい景観を生み出す場となったりする等、地域の活性化にもつながるという多様な効果もあります。

具体的にどのような取り組みが行われているか見てみましょう。

宮城県気仙沼市(大谷海岸)

大谷海岸の海岸線

事例

住民全体による議論を重ねて合意した防潮堤・道路・道の駅の一体的整備計画

実施内容・効果

砂浜を保全しつつ、海岸の国道を嵩上げして防潮堤の機能を持たせ、この背後地に道の駅や防災拠点を整備しました。

保全された砂浜の景観は観光資源としての価値を持つだけでなく、レクリエーションの場としての活用や、津波、高潮等の減災効果もあります。道路と道の駅との一体的な整備により、地域経済の活性化も見込まれます。

東京都世田谷区

事例

緑地や雨水貯留浸透施設の活用による豪雨対策の推進

実施内容・効果

「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要領」と「世田谷区雨水流出抑制施設技術指針」を平成30年に改正し、雨水貯留・浸透施設だけでなく、緑地による雨水の浸透量も評価することにより、効果的に流域対策を進めることとしました。技術指針では、グリーンインフラ施設として雨庭やグリーンストリート、芝地・植栽等を挙げ、これらの設置を促しています。

緑地の整備にともない、雨水浸透による水源・地下水涵養、局所気候の緩和効果が得られます。また街の景観を向上させるとともに、環境教育の場としても活用できます。さらに、河川・下水道への雨水の流入量が減少し、浸水被害の緩和に寄与します。

さいごに

皆さまがお住まいの街でもすでに「グリーンインフラ」があるかもしれません。

今回紹介した事例はほんの一部で、日本各地さまざまな取り組みが行われています。

散歩の途中で見つけてみてはいかがでしょうか。

環境庁「自然の持つ機能の活用 その実践と事例」(https://www.env.go.jp/content/900473398.pdf)を加工して作成

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